2学期終業式
【表彰伝達】
〇ソフトテニス部 新人戦 男子団体3位
〇テニス部 新人戦 男子団体3位
〇軟式野球部 群馬県優秀選手2名
〇吹奏楽部 群馬県高等学校総合文化祭吹奏楽専門部大会 最優秀賞
アンサンブルコンテスト 金賞
〇高校生科学研究発表会(QST) 入賞2組
〇群馬県高等学校作文コンクール 奨励賞
〇お弁当甲子園 入選
【終業式式辞】
2学期が始まった9月1日、最高気温は38度でした。あの厳しい暑さから、冬の寒さの中で迎える今日までの4か月間、大変多忙な日々ではありましたが、こうして無事に終業式を迎えられたことを嬉しく思います。
今学期も、皆さんの活躍には目を見張るものがありました。バレーボール部の全国大会出場、吹奏楽部のアンサンブルコンテスト西関東大会出場に加え、軟式野球部は県内主要大会3冠を制覇。2年生の小林君は、その活躍が評価され、来年5月に東日本代表として甲子園の土を踏むことになりました。
学芸部でも、物理部がAIチャンピオンシップで準グランプリを受賞。ぐんまイノベーションアワードでは、6名3組がファイナルに進出し、高校生ビジネスプラン部門の入賞を本校が独占するという快挙を成し遂げました。これらは一例に過ぎませんが、どの活動においても、皆さんがそれぞれの場で力を尽くし、大きな成果を残したことを大変誇らしく感じます。
こうした成果の背景には、勝利という「結果」以上に、そこに至る過程で培われた「目に見えない力」があります。体育館やグランドに響く声、放課後の教室で繰り返される議論、失敗しては立ち上がる粘り強さ。こうした一見「非効率」に見える時間の積み重ねこそが、皆さんの人間性を深める礎となっています。
さて、少し前になりますが、10月にノーベル賞の発表がありました。今年は日本から2名の研究者の方が受賞されました。私は化学の教員ですので、特に、京都大学の北川進先生のノーベル賞受賞と、その研究哲学に深く感銘を受けました。北川先生が開発された「金属有機構造体(MOFモフ)」は、ナノスケールの無数の「孔(あな)」を持つ画期的な材料です。この研究の根底には、古代中国の思想家・荘子が説いた「無用之用(むようのよう)」という概念があります。
北川先生は、かつて湯川秀樹博士の著書を通じて老荘思想に触れ、こんな言葉に出会いました。「粘土をこねて器を作る際、人は形ある粘土の部分(有用)ばかりを見るが、実際に器として役立つのは、中にある『何もない空間(無用)』である」
化学の研究対象というのは通常、原子が詰まった「物質」そのものです。しかし、北川先生はこの思想に導かれ、あえて「何もない空間」を主役にするという逆転の発想に至りました。「空間は一見、無用。しかしその空間に分子を取り込み、貯めたり変えたりすることで、地球規模の課題を解決する力に変わる」というのです。効率や目に見える利益ばかりを追う現代社会において、一見無駄に見える「余白」こそがイノベーションの源泉であることを、先生は見事に証明されました。
この発見は、ある種の「セレンディピティ(偶然の素晴らしい出会い)」に導かれたものでもありました。かつてペニシリンや電子レンジが発見された時のように、当初の目的とは異なる「予期せぬ出来事」を好奇心で受け入れたことが、新しい価値を生んだのです。
皆さんの学校生活も同じです。自分とは異なる価値観を持つ友人と語り合い、時には意見がぶつかる。それは一見、非効率的で遠回りなことに見えるかもしれません。しかし、その「無駄」に見える対話の時間こそが、皆さんの視野を広げ、独創的なアイデアを育むための「器の空間」となります。
これから皆さんが漕ぎ出していくのは、AIが最適解を即座に提示する時代です。しかし、AIにはできないことがあります。それは、「無用の用」を面白がり、偶然の失敗を幸運へと転換する人間特有の感性です。
細菌学者パスツールは「幸運は準備された心のみに宿る」という言葉を遺しました。北川先生も大切にされている言葉です。「準備された心」とは、日常の些細な違和感に気づき、一見無関係なもの同士を結びつけようとする知的な遊び心のことです。
冬休み、スマートフォンの画面から少し目を上げ、五感を研ぎ澄ましてみてください。現実の世界にある「心の機微」や「些細な変化」を観察すること。それこそが、未来のセレンディピティを掴む準備となります。
来る令和8年が皆さんにとって輝きに満ちた素晴らしい1年になることを祈り、私からの式辞といたします。